乳幼児医療全国ネット
乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク

乳幼児ネット2010年5月集会
5月集会の概要
5月集会の基調報告
1、国による制度創設の現状と今後の課題
2、地域による運動の現状と今後の課題
3、制度実現を



資料(PDF)
5月集会の概要
5月集会の基調報告
国制度創設を求める各階の声


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基調報告
国による乳幼児医療費無料制度の創設等を求める運動 の現状と今後の課題
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2010 年5月26 日 「乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」事務局



2 地域における子ども医療費無料制度の拡充を求める運動の現状と課題


(1) 制度の現状

@ 市町村制度


厚生労働省は今年4月、「乳幼児医療費等に対する公費負担事業実施状況(2009 年4月1日現在)」をまとめました。


全国の市町村乳幼児医療助成制度の対象年齢(厚生労働省調べより)
年齢:満年齢 各年4月1日現在  (自治体数)

    2歳児
以下
3歳児 4歳児 5歳児 就学前 6歳児
以上
中卒以上 全市町村
通院 2001年 1685 431 184 298 597 34 20 3249
51.86% 13.27% 5.66% 9.17% 18.37% 1.05% 0.62% 100%
  就学前以上:651(20.04%)
2009年 8 42 7 48 980 366 349 1800
0.44% 2.33% 0.39% 2.67%v 54.44% 20.33% 19.39% 100%
  就学前以上:1695(94.17%)
入院 2001年 869 280 132 740 1131 19 58 3249
26.75% 8.26% 4.06% 22.78% 34.81% 0.58% 1.79% 100%
  就学前以上:1208(37.18%)
2009年 0 0 0 45 721 644 390 1800
0% 2% 0% 2.50% 40.6% 35.78% 35.78% 100%
  就学前以上:1755(97.5%)

 それによると、通院について助成対象を「就学前」以上とする市区町村数は1,695で全市区町村数の94.17%に達し、
2001 年4月(全市区町村数比:20.04%)と比べて大幅に増加しました。
入院について助成対象を「就学前」以上とする市区町村数は1,755 で全市区町村数の97.5%に達し、
2001 年4月(全市区町村数比:37.18%)と比べて大幅に増加しました。
 いまでは、助成対象を「中学校卒業」以上とする市区町村も通院で349(19.4%)、
入院で390(21.7%)になっています。
 しかし、さまざまな事情で対象年齢を5歳児までとしている市町村も通院で105(5.8%)、
入院で45(2.5%)残っています。
 市町村制度全体を底上げし、格差を解消していくためには、国の制度創設が必要です。



A 都道府県制度の進展
  1. 昨年の5月集会以後、下記の都県で拡充が行われました。
     東京(入院・外来とも中学生2割負担から通院1回200 円、入院無料へ)
     山形(入院について未就学児から小学6年へ)
     群馬(外来について未就学児から中卒へ)
     長野(入院について未就学児から小学3年へ)
     鹿児島(入院・外来とも5歳から未就学児へ)


  2. 今年度以降も下記の県で拡充が予定されています。
     ・ 新潟(2010 年9月より、外来は、3人以上子どもがいる世帯について、全子小学校卒業まで対象 )
     ・ 福井(2010 年10 月より、外来・入院ともに小学3年まで拡大。
      ただし、助成対象が拡大される6歳以上については医療機関毎に入院1日500 円:1ヶ月4,000 円限度、
      入院外1月500 円:500 円に満たないときはその額の負担が導入)
     ・ 大分(2010 年10 月より、入院について中学卒業までに対象拡大)
     ・ 徳島(2012 年4月より、入院・外来とも小学3年まで対象拡大)


  3. 通院で就学前まで助成する都道府県は、2001 年4月時点では2県のみでしたが、
    2010年5月には36 都道府県に拡大しています。入院で未就学児まで助成する自治体は、
    2001 年4月時点で13 県でしたが、2010 年5月には44 都道府県に拡大しています。
    ただし、助成対象を児童手当法準拠としている都道府県制度も少なくありません。


  4. こうした都道府県では市区町村が独自に上乗せ助成を行っています。
    しかし、これでは財政力の厳しい市区町村は大変です。都道府県制度として、入院・外来とも
    少なくとも就学前まで助成対象とするだけでなく、所得制限や自己負担制度をやめさせる
    取り組みが必要です。



(2) 地方制度拡充の今後の課題

@ 高校卒業までを助成対象に


 昨年の「5月集会」では、「中学卒業までを助成対象に拡大する取り組みを進め」、
「少なくともすべての自治体で、入院・外来とも就学前まで拡大しましょう」と訴え、
2009 年4月1日現在、通院でも全自治体の94.17%が就学前まで助成をしており、
入院では97.5%の自治体が就学前まで助成をするに至っています。
 また、「中学卒業」までを助成対象とする市区町村も通院で19.39%、入院では35.78%
に広がっています。
 これは、この間の大きな成果ですが、児童福祉法第2条では、「国及び地方公共団体は、
児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と規定していま
す。この立場に立ち、子ども医療費無料化の対象を18 歳未満まで拡大する取り組みを進め
ましょう。
 そして、市区町村でこうした取り組みが実現できるよう、都道府県に対して助成対象年
齢の拡大を求め、所得制限や自己負担制度をやめさせる取り組みを進めましょう。


A 所得制限や自己負担を止めさせましょう

 一部の自治体で、対象年齢拡大と引き換えに、所得制限や自己負担を新設する動きが
あります。
 所得の額はその時点での収入で判断されますので、生涯賃金がかわらなくても、両親が
比較的高齢で出産された場合は、所得制限に該当しやすくなります。したがって、所得制
限を導入すべきではありません。
 また、例え200 円の負担でも、週に1回受診をしなくてはならない患者さんであれば、
年間52 回の受診で1万円を超える負担となります。2箇所に受診しなくてはならなければ
2万円を超えてしまいます。
 例え1回200 円でも受診抑制が発生する可能性があるのです。
 子どもは、成長期にあります。受診抑制によって取り返しのつかない事態を生じさせて
はなりません。
 そもそも、子どもの受診の際には、仕事を休んで付き添ったり、交通費がかかるなど、
窓口負担が無料であっても保護者の負担はかさみます。無駄に受診することはあり得ませ
ん。


B 社会保険診療報酬支払基金を活用して現物給付方式を広げよう

 厚生労働省は2006 年3月30 日、@乳幼児・児童、A障害者、B一人親家庭、C妊産婦、
D老人を対象に都道府県又は市町村が行う医療費助成事業について、社会保険診療支払基
金(以下「支払基金」)がその審査・支払業務を受託してもよいとの通知を発出しています。
この通知を活用し、都道府県制度が償還払いであっても、市町村制度を現物給付に改善する
取り組みもすすめましょう。


C 国保国庫負担金減額調整廃止を求めよう

 窓口負担を現物給付で軽減している市町村に対して、政府は、国民健康保険療養給付費
等国庫負担金を減額しており、このことが、現物給付方式に改善する際の障害となってい
ます。  乳幼児・母子家庭などに対し、現物給付で助成することを理由に減額調整をすること
は、政府の少子化対策とも矛盾するものです。
乳幼児医療費無料化を実施している自治体に対する国保のペナルティの廃止について、
3月1日の衆議院予算委員会で鳩山総理は「旧政権からの課題だ。そのような認識の中で、
前進ができるように努力してみたい」と答弁しています。
 これを実現するためには、地域から大きな声が寄せられることが重要です。減額調整の
廃止を国に求める意見書の提出を、市町村議会に働きかけていきましょう。